6時間ほど電車に揺られて辿り着いた静岡は、
あれだけの台風被害を感じさせないほどの日常感。
長袖を手放せなくなった秋田と、長袖の気配など微塵も感じられない静岡。
西の空気は絶対的に元気だと思った。
その後は神奈川でnacca一家の世話になる。
子供と車のある生活。
僕は都内の運転が大好きだった。
新生活に心を躍らせて、いつもより速い速度で街並を見たあの日。
とりわけ、世田谷区の気取らず、落ち着いた風景が忘れられない。
それはかつて憧れた高校生時分の東京像がそれであり、
その快楽にも似た呪縛は、未だに健在だった。
駒沢のバワリーキッチンでランチを。
昼時の賑わいも楽しく、以前に利用したときよりも、俄然おいしく感じた。
気に入った場所が定着すると、とにかく強い。
その土地にある店やそれをつくる人、客、どれをとっても問題がないのだ。
だから僕にとって、やっぱり世田谷は特別。
駒沢公園で時間を過ごす。
老若男女のランナーからはじまり、スケートボードに興じる若者、
部活であろう学生の団体、ベビーカーを押す家族連れ。
これは都会だから得られる幸せとも云える。
スタイリッシュかつ身近で自由な公園の在り方。
僕は公園が近くにある幸せを知らなかった。
自然豊かな秋田だったら?
その後、目当ての南青山で買い物。
自分の世代に合っているのかどうかはいず知らず、
ファストファッションが定着したのにも関わらず、
ここ最近の南青山のショップが面白い。
視覚と味覚の融合は、街ではなく同一のショップ内で既に起こっている。
感情と言葉を操るようになったAスケ。
部屋着の暴力的なヴィジュアルでお分かりいただけるよう、
良くも悪くも終止彼のペース。
まるでホームアローンのように道具を駆使し、
背の高さを超えるシンクで水を飲んでいたモンスター。
故郷はあるが、生活の場は忘れていいときがあると思う。
どこにも属さないような強さや自由気ままさは、遇う人会う人を大切にする。
―やさしい人は強い人だ
きのうよりも、ずっとずっとやさしい人になりたい。
仕事混じりの旅の終わりは、そんな気持ちにさせていた。
Cely