音楽をダウンロードで聴く生活。
それにより得たもの、失ったもの、
やはり"今年の5枚”に確実に反映される。
2010年後半の僕の音楽生活は、
そのほとんどが1曲単独の無料ダウンロードであり、
リミキサーが披露するリミックス曲を拾う生活である。
それは、玄人の選曲だからムーヴメントとして早く、
さらにオリジナル音源としての楽曲の良さが伴っている。
結果、秋田に居ながらにして、
世界の音楽の流れを感じることができる。
僕は音源を形として残すことはほとんどしなくなった。
だから今回からは、無数のデータから形あるものとして選ぶ5枚となる。
皮肉なことにこの作業がなければ、ヴァーチャルな音楽生活だったとも思える。
ということで現実を実感するために、"今年の5枚”を選んでみる。
■ TOURIST HISTORY / TWO DOOR CINEMA CLUB
長いこと待ちわびていたこのアルバムから2010年は始まった。
キャッチーなメロディとその聴き易さから、多くの曲がリミックスされ、
四捨五入して約一年経った今でも、未だにそれを耳にする。
それは、このアーティストが若くして多くの人から愛されている証拠であり、
これからも彼らを注目していくことに、間違いはない。
■ CRYSTAL CASTLES / CRYSTAL CASTLES
1stの尖り具合も勿論だが、2ndのヴァリエーションの豊富さに驚いた。
1枚をまるごと聴くという「流れ」の面白さは、こういうところにあるのだろう。
3曲目の"DOE DEER"なんて、こんなに突き抜けちゃうんだ?!、と、
あっけにとられながらも、フワーっとしたのを思い出す。
PVやジャケット写真に代表する、彼らのヴィジュアルも目が離せない。
■ KITSUNE x PONYSTEP MIXED BY Jerry Boutheir
KitsuneもPony stepも無論大好きなのだが、
リリース前に音楽として成立するのかは、正直、半信半疑でいた。
その疑いはすぐに晴れ、もはやオリジナル音源よりも
リミックスの方がすんなりくる、と僕の芯まで浸透してしまった。
そしてファッショナブルな面々が揃うこのプロジェクト。
やはりプロモーションも、洒落ているほど洒落ている。
■ HEARTBEATS / GRUM
全く知らなかったダンスミュージックのアーティスト。
NMEでもPVが話題になったようだ。
全曲80sを意識した統一感のある楽曲。
M83とはまた違う、あの年代のバブルなテイストでの打ち出し方も、
僕にはセンセーショナルに入ってきた。
■ LIFE OF LEISURE / WASHED OUT
2010年に出逢った新しい音。
ノスタルジックかつセンシティブな音楽。音に情景が浮かんでくる感覚。
紙ジャケットに手書きのシリアルナンバー入りで限定する売り方。
大手、ダウンロード購入の時代に、インディーであることの勝手のよさが爽快だ。
それも含め、カウンターカルチャーとしての面白みも楽しみたい。
"今年の5枚”のアルバムには、本当にどれも捨て曲がない。
また、1枚を通しての世界観が素晴らしいものばかり。
そういうセレクトもなかなかできないと思うこのごろ。
ダウンロード時代は1曲購入の敷居が恐ろしく低い。
"今年の5曲”であれば、話は大きく変わってくるというものだ。
そして、そうなったらそうなったで面白いだろうな、という自分もいる。
でも、1枚のアルバムにこだわって聴くからこそ、
それを取り巻くカルチャーに目を向けることも一つの側面であろう。
さて僕の音環境も、来年はどうなることやら…
Cely